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〈社長対談⑥〉株式会社メディリリーフ代表取締役 荒井ゆき様

(安岡)

今日は株式会社メディリリーフ代表取締役の荒井ゆき社長にお越しいただいています。よろしくお願いします。



(荒井様)

よろしくお願いします。


(安岡)

最初に、前職でどういったお仕事をされていて、その後独立された経緯などを教えていただけますか。



(荒井様)

はい。私は理系の大学院を出て、新卒で製薬会社に入り、臨床開発の部署に配属されました。最初は医療機関にお伺いし、治験データの収集や進捗の管理などを行っていました。治験なので割と大きな施設に行くことが多く、特に新人の頃は先輩と一緒に全国津々浦々のご施設にお伺いしていました。


(安岡)

製薬会社でそういったお仕事をされていて、お辞めになってから中小企業診断士の資格を取られていますが、何か理由があったのでしょうか。


(荒井様)

はい。会社員で働いている間にご縁があって結婚、出産しました。産休と育休を取り、保育園に預けて仕事に復帰したのですが、自宅から会社まで距離が遠かったことと、子供との時間を取りたいという気持ちもあって、いろいろ悩んだ末に、思い切って退職して専業主婦になりました。

その後、2人目が産まれて、2人目が幼稚園に入るタイミングで、少し自分1人の時間ができました。前職に復帰する選択肢もありましたが、フルタイムでの会社員となると自分の時間の都合がつきにくい為、いろいろな働き方を検討する中で、何か資格をと考えて、中小企業診断士にたどり着きました。縁あって1年で合格できたので、そこが第二のキャリアのスタートのようなものですね。


(安岡)

なるほど。出産・育児を契機に、様々なキャリアを考えられたという事ですね。

医療経営士も持っていらっしゃいますが、医療で何か改善したいという思いがあって、中小企業診断士や医療経営士を取られたということでしょうか。



(荒井様)

中小企業診断士を取ったときは、特に医療系に業種を絞らずにやっていこうと思ってスタートしました。医療の世界は日進月歩ですから、5年もブランクがあるともう戻れないかなと思っていたので。

いざ始めていろいろお声がけいただく中で、自分が新卒で育った医療業界での知識や、身についていた用語や習慣が、意外と他の業界の方に重宝されました。それなら、掛け算で何かできるのではないかということで、医療系に特化した何かをやっていこうと思い、医療経営士の資格を取りました。

また、信頼関係という意味でもBtoBのお付き合いがしていきたかったので、個人事業でのスタートではなく、現在の株式会社メディリリーフを2019年3月に設立しました。


(安岡)

やりたいと思う気持ちから、資格を取得したり、法人を設立されたりとしていったのですね。とっても、理にかなっていて、素晴らしいと思います。

さて、今までのご経験などを伺いましたが、会社ではどういった内容のサービスを提供されていますか。


(荒井様)

今、一番力をいれているのは医療機関の組織づくりです。私自身のポリシーとして、「働くなら皆が気持ちよく働きたいよね」という想いがあって、その上で、仕事をしていけば、サービスの質も上がっていくと考えています。

現実的に仕方がない部分もあるけれども、同じ働くなら雰囲気良く、いい形で働けるといいなという思いで、組織づくりやコミュニケーションのお手伝いに一番注力しています。


(安岡)

そうですね。組織作りに於いて、雰囲気作りは、とっても重要なファクターですよね。DEPOCでも医療機関の求人サイトを作成させて頂く際には、働く皆さんの笑顔を引き出し、より良い雰囲気をWEBサイトに落とし込んで、作成させて頂いています。副次的な効果ですが、WEBサイトを作ってから、皆さんが積極的になったり、明るくなったりしたとのお声も頂いています。



(荒井様)

ありがとうございます。あとは、世の中でHR Techとか組織づくりがトピックとして流行りつつあるところではあるのですが、実際に専門の業者を入れて取り組んでいるところは少ないと聞いています。ただ、ニーズとしてあるのは感じていて、興味を持ってくださる方や、実際にやってみたいとお声がけいただいて、現在、進めている医療機関もあります。


(安岡)

なるほど。私も先日伺った医療法人で、採用に関しての出口戦略の話をさせていただいたところです。その医療法人では、現在、人を採用しようとしているのですが、入職しても辞めてしまったら、また採用にも教育にもコストがかかる。その為、どう組織を作って、どうやって働きやすい環境を作るかが課題と認識されていました。


(荒井様)

確かに、長い目で見たときに、しっかりした組織作りをすることが、結果的に良いですよね。


(安岡)

そうですね。正直、採用と教育にはかなりのコストがかかるので、短期的なコストも下がるはずだと思っています。長い目というのが1年単位か3カ月単位なのか分かりませんが、刹那的にお金を使うのではなく、組織全体の改善を図ってコストを下げていくことがとても重要な気がします。


(荒井様)

特に医療業界、看護師とか医療職の方は転職の回転が速いです。特徴として女性が多いので、出産や介護での離職が多いのはある程度仕方がないですが、キャリアアップしたいけど、現在の医療機関ではできないといった、前向きな理由での転職の方も結構いらっしゃいます。本当に現在の医療機関ではできないのか、医療機関側でもしっかりとしたヒアリングを行い、検討することで、院内の質の向上や組織作りの変革も出来るのではないかと考えています。あとは、人間関係ですね。そこも私たちのような第3者が入る事で、出来ることもあるのではないかと考えています。



(安岡)

キャリアアップについても、例えば薬剤師であれば、その病院にがん専門薬剤師が1人いたりすると、また違ってくるのではないかと思います。その病院の中でキャリアアップできる仕組みがあれば辞めずに済むかもしれません。


(荒井様)

本当はそこができると、いい循環になって全体の力が上がっていくと思います。

ただ、医療機関は非常に特殊で、スペシャリストでありながらチームで動く必要があるので、そのバランスが難しいです。チームを優先しすぎると、スペシャリティーを極めたい人からは不満が出る。その逆もしかりです。経営層の方がそこのバランスを少し意識するだけでも違うのかなと思っています。


(安岡)

その辺りの、具体的な事例や取り組みの話ってありますか。


(荒井様)

現在、進めている医療機関では、院長先生はじめ、各セクションのトップの方々と面談を行いました。TOPの方々の中には、スペシャリティで職人肌の方が一定数いらっしゃって、「自分の背中を見て学びなさい」という考えも強く出がちでした。また、昇進については「年功序列」「仕事ができる人」に役職を与えることが多かったので、マネジメントに向いているなどの要素が抽出できない状態で組織が作られていた側面もありました。

そこで、管理職向けの研修を行い、マネジメントについての知見を深めていただくと同時に、そこでの取り組みや反応、アンケートから、技術的に優れているだけではなく、「人の采配」に向いている人を見つけ出せたらということで、今、進めているところですね。


(安岡)

とっても良い取り組みですね。スペシャリティを取りまとめる為の管理職をどう選ぶか。ここは是非とも、結果として出していただきたいですね。ものすごい、価値のあるテーマかと思います。


(荒井様)

そうですね!とっても難しいですが、今取り組んでいる医療機関では、一旦一般職は置いておいて、まずは課長(科長)、係長(主任)クラスの中間管理職のところを是非やって欲しいということで進めているところです。


(安岡)

ありがとうございます。それでは医療機関で足りないと感じられている部分はありますか?


(荒井様)

はい。組織力というか社会人力といった教育が全般的に不足していると感じています。

新卒からずっと医療機関で働いてきた方は、一般企業で最初に受けるような社会人マナー教育のようなものを受けていなかったりします。単に、「知らないからできない」ということですので、研修を行う事で十分に対応が可能になるのです。

また、医療機関の部長クラスの方は、若い方の社会人力が足りないと感じているようです。言い方として良くないかもしれませんが、わがままな子供のような感じだと。病院がやってくれないから、環境を整えてくれないからできないと言うけれど、そうではなくて、環境を作るのは自分達でしょうと。そこの意識も変えてもらわないといけないと仰っています。


(安岡)

なるほど。与えられたものを使うのか、それとも与えられる前に自分たちで掴みに行くのか、ということですね。


(荒井様)

そうですね。管理職、マネージャー層を集めた研修で「マネージャーの皆さんはもちろんご存知だと思いますが、若手の方にはこういう事を教える必要がありますよね。」という話をすることがあります。そこで、ご自分でもできているか振り返るきっかけにもしていただきたいと考えています。

あとは、医療機関から非常に期待していただいているのが、全管理職が同じ研修を受けることで院内の共通言語ができるというところです。全員が同じ話を聞くことで、「あの時こんな話を聞いたよね」と職種間でも共有することができる。一部の人に外部に研修を受けに行ってもらう場合ではこうした効果は得られないため、研修後の結果をとても楽しみにしていただいています。



(安岡)

病院の多くは縦割りですよね。その縦割りの中で情報が共有できないことの問題は多数あると思うので、特に、チームで動く必要がある医療機関では共通の言語や目標があると違う気がします。


(荒井様)

どこの病院でも、いろいろな部署から集まって委員会のような活動はやっていると思いますが、当番だから行くといったような感じで、コミュニケーションの活性化という意味ではうまく活用できていない印象です。


(安岡)

実際に、医療者が集まると診療の話になったりしますからね。


(荒井様)

はい。ですので、今回は、思い切って日常業務から離れて研修という時間を設けていただくということで進めています。


(安岡)

その医療機関で、その先に求められているものはなんでしょう。売り上げの改善、それとも離職率ですか。


(荒井様)

メインは離職率の改善です。現在導入していただいている医療機関は、高度急性期で業務がハードということもあり入れ替わりが激しいのです。離職されると、補充のための採用にかかるコストもそうですが、新たに業務を覚えてもらう再教育のコストもかかります。業務の流れを覚えてもらうだけでも、最初からいきなり即戦力というわけにはいきません。そこで、余分な離職を減らしていきましょうということでお話させていただいています。


(安岡)

なるほど。DEPOCでは、入口の部分でのブランディングの求人サイトでマッチする人に入職してもらう戦略も取っています。実際に入職してから、どのくらい差があるのかについては別としても、入口から出口までをしっかり考えていく必要がある気がします。


(荒井様)

これは余談ですが、民間病院の方の話で、公立病院から移って来る方に「うちは大変ですよ、ハードですよ。」とさんざん説明した上で、「大丈夫です、やりたいです。」と言って入職したのに、いざ働き始めると「こんなに大変だと思わなかった。」と辞めていく。最初に伝えたはずなのに、ということがありました。


(安岡)

そのギャップが想像できないんですね。今回いただいたこの資料を見て、僕がすごく面白いなとおもったのが、スタッフの満足度調査です。マネージャー層ではなく、その下のスタッフの方々が職場に対して本当にどう思っているのか。満足度調査で、何が問題になっているのかを洗い出して見える化することが非常に重要だと思っているのですが、この辺は研修の中で最初にやったりしますか。



(荒井様)

職員満足度調査は、第三者評価を受けるために必要なので、毎年やっているというご施設様が多いと思います。今研修を実施している施設では、職員満足度調査を実施はしているけれども、職員へのフィードバックができていないというのが最初のご相談だったんです。

そこで、過去5年分ぐらいを分析して、全部の項目をグラフで出すとやはり見えてくるものがありました。セクションごとに分けると、はっきり職種別に不満を感じている部分や良い部分が出てきたんです。引き続き、前年度のデータも追加して推移を見ていきますが、特に去年はコロナがあったので、その影響を見たいと思っています。

 取り組みをすると、反応が見えます。例えば職員の休憩所を少し広くしたら、そこは満足度が上がります。やれば結果が出ることが数字で見えるので、取り組んだ事務の方もやってよかったと思えます。今年もコロナで大変だったのですが、共通の目標に向かって一丸となって頑張ったという思いがあるので、その反応が数字でも出てくるのではないかと考えています。

足りなかった部分を振り返って、何か対策をというように、PDCAのアクション部分を見るツールにもなりますし、やって良かったと思えるようなツールにもなります。そういう意味でも、職員満足度調査をぜひ有効活用していただきたいと思っています。



(安岡)

機能評価のためだけではなく、それをどう分析して活用していくかということが次につながるということですね。


(荒井様)

はい。今回、私どものような第三者に分析してもらってとても良かったと言っていただいています。調査は無記名なのですが、中の方がやるとどうしてもいろんな思いが出てきて、「これはあの人かな。」とか考えてしまう。私どもはお一人お一人の顔が浮かぶわけではないので、事実だけを見て冷静に分析し、レポートを提供できます。


(安岡)

そうですよね。DEPOCでも取材する機会が多いのですが、忖度が無いので、第三者が行くことによるメリットは非常に大きいと思います。

こういう取り組みをしていこうといったようなところには、絶対に第三者の力を使った方がいいと思っています。病院内でやるとしたら、今やっている業務に追加されるわけで、それは本当に大変です。


(荒井様)

そうですよね。ストレスチェックなどは院内でやっているとは思いますが。


(安岡)

実際、そのストレスチェックの後に誰が何をするのか、というところですよね。じゃあ休みを増やすのか、他の人にも負担がかかるよね、といったことも出てくると思います。


(荒井様)

だから、とりあえず産業医に面談はしてと(笑)。


(安岡)

そうなってしまいますよね(笑)。


(荒井様)

本当にもったいないと思っています。あと一歩のところなのですが、それを中で全部やるとなると、普段のお仕事がありながらだと難しいと思います。


(安岡)

プラスアルファのことですからね。でも皆さんやらなきゃいけないと思っている。


(荒井様)

患者さんの満足度調査もそうですね。医療はサービス業の側面もありますので、本来は目をつむれない部分かと思います。



(安岡)

今後の医療費削減の方向性を考えると、選ばれる病院にならなければいけない。やはり患者満足度は重要ですよね。もちろん職員満足度が上がれば、患者満足度も上がるはずなんですよね。絶対に、働きやすい職場になれば、患者さんに対しても余裕が出てくる。最初に荒井さんが言われていた、スタッフは忙しそうだけれども患者さんは待たされるといったような場面でも、一声、声がかけられる余裕が出てきたりといった、少しずつ何かが積み重ねで出てくると思います。


(荒井様)

そうすると、患者さんからもいい反応が返ってきて、やって良かったというような、非常にいい循環が生まれるのではないかと思っています。

今まではやりっぱなしになってしまっていて、職員満足度調査にしても、どうせアンケートに答えても何も変わらないでしょという声もあったようです。そうではなくて、きちんと変えていこうとしているんだよ、という経営側の姿勢が見えれば、じゃあもうちょっとこの病院で働いてみようかなということにもつながると思います。


(安岡)

そうですね。ある病院で薬剤師の求人サイトを作った時の話ですが、その病院は、首都圏だけれども郊外にあるので、薬剤師の応募が非常に少なかった。サイトの立ち上げ後の次の年に4人も薬剤師の入職が決まりました。理由として、今までは中の情報が外に出ていなかった為、その情報をしっかり整理して、この病院では何が出来るのかを発信したのが一つ。さらに、入職した方の1人が「薬剤部にホームページを作ってくれるような病院なら、薬剤師に優しいだろうと思った。」とおっしゃっていたらしいです。診療科別のサイトはありますが、薬剤師だけの仕事に特化したサイトを立ち上げるところはなかなかありません。


(荒井様)

あまり見かけ無いですよね。看護部はありますが。


(安岡)

はい。だから薬剤部でそういうものがあるということは、薬剤部にも目を配られているという印象を受けたらしいです。医師と看護師だけではなく、他の職種の方にもフォーカスがあてられるというのは、やはり違うと思います。

やったら返ってくる、言ったら戻ってくる、経営層が反応してくれるというのが働く人にとっては全然違うと思います。満足度調査も、きちんと利用することで次のやる気につながっている気がします。


(荒井様)

はい。フィードバックが大事ですね。何か調査されたけど、あれは何だったの?というのが一番良くない。ただ、それを全部中でやるのは大変なので、代わりにレポートを作って、皆さんに公表できるような形に、それこそ見える化して提供しています。


(安岡)

ありがとうございました。医療機関への力になれるように、是非とも頑張ってください。

それでは、最後に今後のメディリリーフ様の展開について教えてください。


(荒井様)

会社自体をスタートしたばかりなので、今の取り組みをもっと深めていく、広げていくことを考えています。ある意味まだ仮説の段階なので、検証を繰り返していって、どんどん磨き上げていきたいなと思っています。

今も中小企業診断士として医療業界以外のお仕事もしていまして、そういったつながりもあったりします。今後、成功事例を積み上げていけば、どんどん一緒にやりたいという方も増えてきてくださるかなと思っています。是非とも良い繋がりを作っていければと考えています。


(安岡)

弊社も微力ながら、是非ともご一緒できればと考えています。

ありがとうございました。


(荒井様)

ありがとうございました。



荒井ゆき社長は、医療機関の抱えている問題点を根本から変えていこうと努力されています。一般企業のクライアントを持ち、医療と企業のより良い部分のサービス提供が出来る会社です。今後も荒井社長から目が離せない。


 
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