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<社長対談⑩>バーズ・ビュー株式会社 代表取締役社長 兼 CEO 夏井様

(安岡)本日は、バーズ・ビュー株式会社 代表取締役社長 夏井淳一様にお話をお聞きしたいと思います。よろしくお願いします。



(夏井様)よろしくお願いします。


(安岡)夏井さん、初めに、ご経歴について、もともとは医療機器メーカーにいらっしゃってから、起業されたかと思いますが、その流れについて教えていただけますでしょうか。


(夏井様)この流れを語るに必ずお話ししなくてはならないのは、ある一人の先生の存在でした。

私は元々、エンジニアですので、医療機器のメーカーでもエンジニアとして働き、たくさんの先生方とお会いしました。その中で、救急医の故・青木則明先生との出会いが私の人生の転機になりました。

青木則明先生は当時、救急医療における社会課題を解決していきたいという強い理念のもと、救急搬送の最適化についてのコンセプトを創っていらっしゃいました。後々に、e-MATCHというプロダクトを使った地域の救急搬送の最適化を行うのですが、我々がe-MATCHをITツールに具現化したというのが、会社のスタートでした。

ですので、会社が建ってからこの事業が始まったわけではなく、事業をやりながら必要に応じて株式会社が必要になったので株式会社化する形を取ったというのがこの企業のスタートです。


救急搬送システム【e-MATCH】のお話


(安岡)なるほど。会社の事業の根幹となった、e-MATCHっていうシステムというのは、どういったものなのでしょうか。


(夏井)はい。e-MATCHは、地域の救急医療の中でも救急搬送について考えられたもので、救急車が病院に患者を運ぶ搬送のところの最適化をするツールです。

ご承知の通り、地域によっては救急搬送がなかなか難しく、搬送の困難な事例が出てしまう地域があり、その搬送の困難を無くしていくようなシステムです。

このシステムは、各病院の状況がどうなっているかを俯瞰の目からデータを集め、現状がどうなっているか、情報を集めます。そして、搬送に最適な、病院と救急車をつなぎ、現在、救急隊が傷病者をどの病院に運んだら良いかという意思決定を支援するシステムとなっています。


(安岡)なるほど。実際に奈良県に導入されているとお聞きしたのですけど、奈良県で、導入されてから、結果はいかがでしたでしょうか?

(夏井様)これが、非常にうれしい話でですね、導入スタートから約10年経過しているのですが、奈良県の救急医療関係者にこのシステムを使っていただいていまして、数字に現れる結果が出てきました。

先ほど申しました搬送困難事例というのは何をもって搬送困難かというと、重傷の患者さんを搬送する病院を探すときに4回以上探しても決まらなかった場合、これを搬送困難と定義することが決まっているんですね。ですので、照会回数4回以上の割合を見てグラフを描いていくと、その地域がどれだけ搬送困難が多いかが見えてくるという具合になります。これを見ていただくと、奈良県では、ここの年からずっと下がっていますよね。



(安岡)はい。平成26年ですね。


(夏井様)割合が下がってくるっていうことは、搬送困難がなくなってくることを示します。もともと奈良県は全国平均よりだいぶ悪かったんです。


(安岡)そういう話が昔ありましたね。


(夏井様)そうなんです。その後、われわれが介在してから、この数値が良くなってきているっていうのがこのスライドによって分かります。つまり、搬送困難が少しずつ少なくなって、最適化されてきたことが、数字で表わされた初めての事例なんです。奈良県もこれを認識していまして、非常にお喜びいただいていて、われわれも一層やる気になっているような事例です。


(安岡)それは、良い結果になって、良かったですね!実際はまだまだ患者さんのたらい回しが起こっている県とか市町村というか、そういった所はあるのでしょうか。


(夏井様)ありますね。総務省の消防庁のほうで、こういった数値を毎年集めているんですよ。だから、残念ながら47位までの順位が付いちゃうんです。順位が低い所はまだまだ搬送困難が多い地域になると思います。


(安岡)なるほど。これから過疎になっていったりとか、地域の分布などが難しい状態になる中で、こういうシステムを入れることで、後々は、そのような地域の患者さんに対して救命率を上げたりとか、そういうところも考えてらっしゃるというところですよね。


(夏井様)おっしゃる通りです。一番のポイントは、救急隊、いわゆる消防署にいる救急隊員、もう一つは病院側で受ける救急医ですね。この間のコミュニケーションがとても重要なので、ここに行政を介在させると、より良い結果が出るかと思います。

また、行政が介在する上で必要なのは、現状のデータです。行政と救急隊、救急医、この三位一体がきれいに回ることで、地域の救急医療の最適化が実現できると考えているのが、われわれのコンセプトです。


(安岡)なるほど。今まで例えばそれをなんとなくマンパワーでこなしていたことが往々にしてあったという事ですね。


(夏井様)そうですね。今まで会議等で共有していたものが、実際、システムを利用することで見える化が出来、これを元に解決できる課題が皆さんの立場とか居る場所によって分かり始めたというのは大きいのかもしれないですね。


(安岡)その通りですね。そこに加えて、新しいドクターカーの話があるとお聞きしていますが。


(夏井様)はい。救急医療の中では救急車だけがプレーヤーではなくて、病院が持っているドクターカーやドクターヘリ、こういったもので患者さんを運ぶというのが、当たり前になってきています。これも地域の救急医療の一つの役割になるんじゃないかということで、これらのデータもe-MATCHのほうに統合化していくことをやり出しています。


(安岡)なるほど。本当にドクターヘリ、ドクターカーというのはこれから在宅医療なども含めてこちらから医療を届けに行く部分も出てくる中で、どのように共有していかなきゃいけないのかというのは、非常に重要な社会課題になってくるのではないでしょうか。


(夏井様)おっしゃる通りです。おそらく様々な企業も手を付け始めていると思いますが、そういったところに今e-MATCHを入れて、情報を共有できると、様々な効果が現れるかと思います。

時代背景とともに救急医療は変わってきますので、その時代背景と共に、変わりゆくものに対してシステムを合わせるというのが、それがわれわれの必須条件です。その最新の情報をまた行政に届ける。医療機関に届ける。消防署に届ける。これができていくっていうのを、ずっと続けないといけないってことですね。


(安岡)ありがとうございます。今の話はバーズ・ビューさんのメインのお仕事といいますか、他にもいろんなお仕事をされているというふうにお聞きしていますけど、会社のコンセプトというか、そういったところを教えていただけますでしょうか。


医学研究成果の社会実装支援のお話


(夏井様)はい。安岡さんもご承知の通り、日本には医療業界の補助金とか助成金というのが、たくさんあるんですよね。


(安岡)はい。


(夏井様)この様々ある補助金とか助成金を、いろんな研究者の先生だったり、企業だったりが獲得するというのが、医療における一つのビジネスの生まれていく姿なんじゃないかなと思っています。

もちろん、それを利用してご自身の研究を実際の製品にしていく流れは、素晴らしいことだと思っていますが、最終的にこの補助金が切れてしまったときに、この事業がその先続くのかとなると、疑問のプロジェクトが多いという現実です。ですので、補助金が出ているうちは続くのですけど、その先の継続的なビジネスを描くっていうとこが非常に難しいと思っています。

やはり社会実装していくというところが一番難しいんじゃないかなと思うんですね。その様な状況の中で、われわれは、社会実装にいろんなプロジェクトで並走していくような、そんな支援企業になろうと考えています。

社会実装に一番重要なのは、製品ができた上で、社会に実装する=販売していくってことになると思うんです。この販売がなかなか医療の世界では難しいと言われていますよね。ですので、製品にもよりますけど、販売ルートの確保から販売の仕方、またマーケティングの仕方みたいなところを並走するというプロジェクトや、時にはわれわれが製品の開発をすることもできたらと考えています。

複雑な医療機器を作るというのはちょっとできませんが、医療機器周りのICTのソリューションを作る部分は、開発する事が出来ます。ですから、プロジェクトに希望の光を差すICTを作ることで、社会実装を目指した支援をしていくような企業体としてわれわれは日々活動しています。


(安岡)ありがとうございます。実際、得意分野みたいなものはやはり救急領域なんですか。


(夏井様)そうですね。救急医療領域と、あとは災害医療領域がメインフィールドと思っていただいて、その周辺が守備範囲になります。また、救急医療の表裏一体として在宅医療があると思います。というと在宅になるんですね。そのため在宅医療も、今後はさらに力を入れていきたいと考えています。

(安岡)なるほど。



【デジタル田園健康特区】のお話


弊社はこれから、内閣府が指定したデジタル田園健康特区の1つである岡山県吉備中央町で、救急医療分野の規制改革を前提とした救急医療DX事業に力を入れていきます。

(※詳しくはこちらをご覧ください)


中山間地域である吉備中央町には救急患者を受け入れられる病院はなく、そのほとんどが岡山市の病院に搬送されることになるため、搬送に約1時間かかってしまいます。

救急医から、救急車に乗る救急救命士が搬送中にできる処置行為が増えることで解決できる問題もあると聞き、弊社は果敢にチャレンジすること決意しました。

地方の過疎化、高齢化が悲観的に叫ばれる中、国が主導する中での産官学連携で社会問題解決に向き合える幸せを噛み締めています。


(安岡)なるほどですね。そういった意味では、社会課題に対してしっかり向き合う企業というイメージがありますよね。


(夏井様)ありがとうございます。


【ISRAEL DEDITAL HEALTH POST(イスラエル・デジタルヘルス・ポスト)】のお話


(安岡)規模感でいうと、日本からはみ出そうなイメージがあるんですけれども、海外とも何かやりとりみたいなものってあるんですか。


(夏井様)やはり、日本で社会実装された医療ソリューションを海外展開に持っていく事をやりたいと思っています。また、海外進出が難しい日本企業さんも多いので、お手伝いをすることもあります。

また、私は以前からイスラエルとの交流が深く、イスラエルにあるデジタルヘルス・イノベーションも日本に紹介しています。日本企業がそれに興味があれば、一緒になってそのイノベーションを製品化していくことを支援しています。こういった流れを作る事で、両国の強みを生かした、製品が生み出せると考えています。


(安岡)なるほど。イスラエルって非常にスタートアップが元気な国というイメージが強いんですけれども、やっぱりそういったところとのマッチングというのもやられているんでしょうか。


(夏井様)もちろんビジネスマッチングも行いますが、どうやってイスラエルが世界でも代表的なスタートアップネーションになれたのかに興味があり、スタートアップを量産するエコシステム、最先端テクノロジーの教育制度やイノベーションを醸成するマインドを調査し、それらを日本に伝えていくことが未来の日本のために重要だと考えています。

ちょうど6月から「イスラエル・デジタルヘルス・ポスト」というWEBメディアを運営することとなりました。これは、イスラエルを中心とするヘルスケア領域や医療関連のニュース、スタートアップ企業の情報などを配信するメディアです。イスラエルと日本をつなぐ架け橋となるべく環境が整った、という感じですね。


(安岡)なるほど。イスラエルで開発なり何なりをしていただいたものを日本に持ってきて、使える、社会実装できるようにしてまた海外に持っていくような事を行っているという事ですね。


(夏井様)そういうことですね。いつも理想型を追い求めています。それを実現するために日々勉強し続けています。

勉強という流れでいうと、イギリスの大事故災害への医療対応プログラム「MIMMS」(一般社団法人)の事務局も、昨年から担っています。災害時の病院において、患者の避難をどうすべきかを学ぶプログラムで、半日から数日コースまで多々あり、医師、看護師、臨床工学技師、救急救命士などを対象に、オンラインや対面で開催しています。災害大国日本において、この活動をもっと広めることが重要と感じています。



(安岡)ありがとうございます。非常に夢のあるお話というか、弊社では、日本国内の医療機関を対象に仕事をしていますが、それこそバーズ・ビューさんは、空から俯瞰で見ているような、そういうことをやられているような企業ですよね。そんな企業がこれからどんどん増えていくとまた面白いことになっていくなと感じています。これからも是非とも夏井社長の熱すぎる情熱で、医療業界へのチャレンジを期待しています。





(夏井様)ありがとうございます。ぜひコラボしましょう!


(安岡)よろしくお願いします。ありがとうございました。


 
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