今回は、経験豊かな女性医師お二人に、御自身が歩んできたキャリアを振り返って頂きました。
若手女性医師の先生方にもメッセージがありますので、是非ともご参考にしていただければと思います。
ワインと一緒に、リラックスした雰囲気でお話を伺いましたので、本音もでております^_^ご覧ください。
【安岡直子Dr】
・医師免許1997年取得
・麻酔科専門医・指導医
・ペインクリニック専門医
【牛尾茂子Dr】
・医師免許2001年取得
・日本手外科学会認定指導医
・日本形成外科学会認定指導医
・日本創傷外科学会認定専門医
Q1:医師になったきっかけは何ですか?
(安岡先生)
実家が開業しており、父が三代目として働いていたことが大きいと思います。また、母から私へのアドバイスの影響もありました。母は専業主婦でしたが、「これからは、女性も手に職をつけて自立したほうがよい、できれば医学部へ行った方がよい。」とよく私に話していました。
(牛尾先生)
私も、母から「これからの女性は、資格を持っていた方が有利な時代がくる。」と言われていました。私の母は職業婦人でしたし、また私の家系は在日韓国人でしたので、資格をもつことが就職の際に有利であると感じていたようです。当時、女性医師が活躍するドラマが放送されていたのと、父が病気がちで入退院を繰り返しており、主治医の先生との交流を持てたこともあり、医師になることに憧れるようになりました。
Q2:今までのキャリアを教えてもらえますか?
(安岡先生)
診療科の選択で悩んでいた頃、麻酔科医の女性と外科医の男性達が活躍する医療系ドラマを見て、私は、麻酔科と外科に強く惹かれました。ところが、私は体力に自信がなく背が小さいことから、長丁場の手術をこなすことは難しいだろうと、外科を断念しました。ペインや緩和医療にも興味があったので、最終的に麻酔科を選択しました。
入局を選択する際、ペインクリニックに興味があったのですが、親族が病院長をしていた大学病院に、ペインクリニックで有名な医局があると知って、出身大学ではなく、別の大学に入局しました。教授とはとても気が合い、楽しく勤務していたのを覚えています。
その後、思いもよらず、40歳で結婚・出産しました。麻酔科医としての技術はあるものの、育児で限られた時間しか働けない自分を、どこが必要としてくれるのかと、考える必要がありました。医局員だった頃のアルバイト先を含め、様々な医療機関を訪問した結果、現在働いている医療機関を選びました。仕事と子育てのバランスがとれ、働きながら技術向上や勉強もできる、とても満足のいく環境です。
(牛尾先生)
私は、医学部受験の段階で外科系を選択すると決めていました。当時見ていた医療ドラマで、外科医が活躍する様子が描かれており、それを見て外科に憧れたのかもしれません。また、医学部合格の花向けに、私の父の手術を主治医の好意で見学させていただいたのも強く影響していると思います。一緒に見学した看護学生がバタバタ倒れていく中、内臓の綺麗さにかぶりつきで見ていました。大学に入ってからも、外科の選択が揺らぐことはありませんでした。
大学卒業後は、有名な病院に初期研修に行くという選択肢もありましたが、周りの人達が出身大学の医局への所属を決めていたため、私も出身大学の形成外科の医局に所属しました。大学では、医局人事で様々な場所での勤務を経験しました。
医局で3年経った時、教授が他の大学へ移られました。私は、その医局の立ち上げ1期生で、関連病院もなかったため、教授の伝手で他の大学の医局へ行きました。その後、1,2年おきに2つの医局を経験しました。
大学卒業から約13年経った頃、医局人事から外れ、個人として一般病院で6年ほど勤務、その後東京へ行き、今に至ります。
Q3:医局時代があったから、今に繋がっていること
(安岡先生)
医局に所属していなかったら、これまでの人脈を得ることは難しかったと思います。医局では、自分の上司の人脈が、自分自身の人脈となることもありました。医師が情報収集したり、自分に合った職場を探したりする上で、人脈は非常に重要です。医局時代に築いた人脈があったからこそ、今があると感じています。
また、医局は窮屈だと思われがちですが、医局は医師として修業できる場所、と私は考えています。自分の子どもによく伝えているのが、「練習無くして身につくものはない」という考えです。九九や漢字や英単語が、練習すればするほど身についていくように、医師も、何度も繰り返し取り組んでいくことで、知識と技術がしっかりと身につくのだと思います。
(牛尾先生)
医局に所属していたおかげで、様々な関連病院・大学病院を経験でき、そこで出会った人達の様々な技術を学ぶこともできました。また、学会発表がほぼ義務でしたので、自然とアカデミックな思考が身についたように感じます。
そして、大学病院の大きな魅力は、既存のものはもちろん、雑誌や論文に載っていないような、もしくは掲載される前の先進医療の知見や技術が見られることと、直接教えてもらえることです。自分が所属する大学病院だけでなく、他の病院の知見も入ってくるため、常に最新の医療を知り、感じることができます。
また何より、図書館が充実しているので、欲しい文献を簡単に即座に手に入れられます。これは非常に大きな意味を持つと思います。論文作成だけではなく、手術前の知識・技術の集取や整理に大きな役割を果たします。
このように、知識や技術を向上させるという意味でも、医局に所属するメリットは大きいと感じています。
Q4:キャリアについて悩んでいる方に一言お願いします。
(安岡先生・牛尾先生)
今いる場所が全てだと思うと、視野が狭くなり、1人で悩みがちです。5年後10年後、自分がどうなっていたいのか、まずイメージを作ることをおすすめします。そのイメージができれば、そのためにどういった資格やスキルが必要か、具体的な目標が見えてくるため、行動に移しやすくなります。
特に女性は、結婚・出産のタイミングに悩む方が多いと思います。5年後10年後のなりたいイメージができれば、そこから逆算して、どのタイミングなら結婚・出産ができそうか、ある程度目安がつきやすくなります。
また、医局の話にもありましたが、人脈作りは、医師のキャリアにおいて意外と重要です。医師としてキャリアアップの必要性を感じる時はもちろん、特に女性医師が産後に仕事と育児の両立がしやすい職場を探す必要性が出てきた場合も、人脈をもっていると助けられることがあります。これからのキャリアに悩む人達は、スキルアップだけでなく、人との関わりも大切にしてほしいと思っています。
【インタビュアー 梅澤 晃子】