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〈社長対談⑧〉株式会社メディカルアドバンス代表取締役 本多隆子様

(安岡)

本日はメディカルアドバンスの本多隆子社長にお越しいただいています。また楽しい話がいろいろできればと思います。よろしくお願いします。

(本多様)

よろしくお願いします。

まだ、社員が1人とか2人の頃からのお付き合いですね。


(安岡)

そうですよね。

では、まず初めに、会社を設立されたきっかけを教えて頂けますか?


(本多様)

42歳で離婚と同時に起業したんです(笑)


(安岡)

おっと、いきなりぶっこんで来ましたね(笑)。会社をつくる前は何をされていたんですか。


(本多様)

3年ぐらい歯科の法人で働いていました。6つぐらい歯医者さんを持っている法人で、そこで立ち上げと増患の仕事をしていましたね。医院の中では私、コンシュルジュをしていたんです。患者さんと先生の間に入って、どういう治療をしていくかとか、どういった詰め物、かぶせ物、インプラントをするかというコンサルタントみたいなことをやっていて、それをきちんとやると、患者さんと仲良くなって、どんどん治療が決まっていくんですよ。


(安岡)

なるほど。


(本多様)

先生に指示されて、患者さんと話をすると「材料はこれとこれがあって。」「どれがいいいの?」「私のお母さんだったらこれにしますよ。」「じゃあそれでお願いします。」みたいになることが多かったので、先生としても楽だったみたいで、すごく感謝されていましたね。


(安岡)

僕もコンシェルジュを考えたことがありますが、実際にやっている人の話を初めて聞きました。そういう患者さんと先生の治療方針を決めていく感じなんですね。


(本多様)

今、歯科業界では多いですよ。医療も、美容皮膚科とかだと絶対にいると思います。


(安岡)

医療も歯科業界の後を追っているから、多分そうなるだろうと思っていて、今のお話はすごく興味がありますね。


(本多様)

保険だけで回そうとしたら、人がいっぱいいるところに作って、患者さんを次から次に回さないといけない。私は患者さんにとっても保険診療と自費診療は半分半分ぐらいがいいと思います。

ただ、自費をやるのはいいけれど、何を選ぶか。そこは、多くの一般の人が喜ぶことが前提だと思いますね。


(安岡)

そういうことをしっかり考えていかなければいけないということですね。

ちょっと脱線してしまいましたが、独立のきっかけとして、コンシュルジュの経験から今の会社の構想を持ったということですか。


(本多様)

はい。そこで患者さんに歯周病の話や、口腔内の話、お口の健康と身体はつながっているんだよというのを一生懸命に話しても、そこの法人の6つぐらいの医院に来た人にしか話ができない。これはもっと全国に広めなければと思ったんです。志だけは高く。


(安岡)

きっかけの志が高いのは、良い経営者皆様の特徴ですね。





(本多様)

ありがとうございます。勢いで起業をしましたが、最初は広げる方法が何もありませんでした。とにかく一般の人に医療情報を伝えたい、本当の正しい医療知識を身に付けて欲しいという気持ちはありましたが、やり方が分かりませんでした。

その様な中、2007年ぐらいから知り合いの先生から開業時に地域の方々にお披露目する内覧会の手伝いを頼まれることが時々あって、ちらしを配って患者さんを呼んで開催すると、非常にうまくいく経験をしました。


(安岡)

なるほど。


(本多様)

「本多さんにやってもらったらすごくうまくいったよ」と言っていただいて、先生方の口コミで弊社の内覧会のサービスが広まっていき、2008年から毎月前月の倍ぐらいの勢いでお客さんも増えて、ビジネスはうまくいき始めました。

じゃあ、たくさん人が来てくれるのだから、医院の中でスタッフさんに予防の話をしてもらおうと。うちの内覧会って、予防のポップをたくさん貼るんですよ。スタッフさんにも、歯周病の話、治療の話、どうしたら一般の人に分かりやすいのかという話し方までしっかりレクチャーしてから内覧会を行います。

普通の内覧会だと、見に来てください、きれいなのね、すごい機械があるけどよく分からない、みたいな感じで患者さんは帰ることが多いですが、弊社では、先生がどういうコンセプトで開業したのか、もしかして今こういう症状が無いですか、こんな危険性がありますとか、糖尿病はこんなに怖いんですよといってポップを見せて、歯周病も全身とつながっていますよといった情報を提供する。そうすると「えー、そうだったんだ、知らなかった。」と驚かれます。内覧会に来場頂いた方に予防知識を伝えて自身の口腔内、健康に興味関心をもってもらい自ら検診や歯のクリーニングの予約を取って頂けるような運営をしています。


(安岡)

すばらしいですね。ドクターは1人なので、話の内容をかみ砕いて地域の方のために時間を取って話しをするというのは非常にいいことだと思います。

うちの父もそうですけれど、多分皆さん知識として全く持っていないと思います。


(本多様)

そうですよね。歯周病予防に関しては、うちは草の根ですけれど、ものすごくたくさんの人に話せている感じです。

また、糖尿病の知識などに関して、一般の方に理解していただくには、足の写真を見せてあげればいいんですよ。足が腐っていく話。そういった話を皆が知っていれば、いろんな人が「ちょっとお父さん今のままじゃだめ」とか声をかけてくれるはずです。ただ、知り合いの糖尿病専門の先生に「絶対あの写真出しましょうよ」と言っても、誰一人OKを出しません。「わかるけど、これはちょっと一般の人には怖いよ。」となっています(笑)


(安岡)

なかなか免疫がないとね。


(本多様)

なぜ指がなくなるのか、あっという間に壊死して、膝から切断して、切断後の生存率が下がって、という話をすると、うちの社員もそれは伝えるべきだと思うのですが、やはり先生もそこまではしたくないと考えていらっしゃる方が多いです。


(安岡)

日本人の寿命は延びましたが、最後まで健康でいられる期間はやはり短い。だから、そこを延ばすならそのぐらいの予防の気持ち、自分達で気を付けようと思わないと。全部医療に丸投げでは良くないですよね。


(本多様)

お医者さんも神様ではないので、ある程度まで進行するとどうにもならない。

よく眼科の先生がおっしゃるのが「緑内障は4段階あって2段階までなら薬で戻る。3段階までいったら杖をつかなければいけない。その前に伝えてあげられればいいけれど、検査に来ない。」それを聞いたら、もう何か伝えたいですよね。


(安岡)

ちゃんと検査に行って、死ぬまで元気でいる。

そこもちゃんと目標として、先生と協力しながら進めていけるようになったらとてもいい取り組みですよね。


(本多様)

本当にそういう形になれれば、良いですよね。


(安岡)

現在、御社は内覧会の業務をメインでやられていますが、やはり内覧会って、ただ人を呼ぶだけではなくて、説明して一般の方々に理解していただくというところが一番の強みということですよね。


(本多様)

そうですね。でも、私達は人を何人、何百人と呼ぶのが強みなので、もちろん説明する人がいなければ、入って行って説明しますが、そこを教えてスタッフさんにやってもらっています。





(安岡)

実際にお仕事をされる中で、何か思い出に残っていることはありますか。


(本多様)

現在のこのコロナの時期だからと内覧会をやらなかった先生がいらっしゃって、開院後、来院の伸びが悪かったそうです。2か月後ぐらいに内覧会をやり直したら、もうV字でぽんと売り上げが上がったとうれしい声を頂きました。今回、内覧会をやるとやらないでは、こんなに違うということがよく分かりましたね。


(安岡)

それがすごいですね。やはり患者さんも情報に飢えているというか、行きたいけど何だろうというところを、しっかりオープンにすることで違うかもしれないですね。


(本多様)

違うと思います。行きたいですよ、中も見たい。でも、声をかけてもらわなかったら、自分からは行かない。「何かやっているの。」とか言って、「もしよかったら見て下さいよ。」と言われて、「じゃあ見てもいいかしら。」みたいな感じじゃないと、そこまで上げてあげないと、誰も入って行かない。


(安岡)

ただ「ここでやっていますよ。」だけだと、なんだか分からないですからね。


(本多様)

みんな「えー。」とか言いながら、嫌々入って行きます。嫌々入ってきて、中でいろいろ聞いて「この先生、いい先生だわ。」とか「ここまで考えて機械を買ってるんだ。」とか「最新ね。」とか言って予約していく。みんな、来たい気持ちはあるのに表に出さない。奥ゆかしい。「無理やり連れてこられてさ。」とか言って。それでもみんなプレゼントもくれるし、情報ももらえるし、喜んで帰って行きますよ。


(安岡)

そういう患者さんとのつながりをしっかり作っているというのは、本当に素晴らしいですよね。

僕も、最初の立ち上がりで売り上げの無い期間があるのはすごくもったいないと思っていて。1回内覧会をやるとか、例えばうちであればWebサイトをしっかり作ることで、最初の立ち上がりが全く違うと思います。


(本多様)

違いますね。歯科だと1か月で大体レセプトが100は来ます。そうすると、歯科のレセプト1枚で約1万2,000円、1か月目で約120万は違うと思います。


(安岡)

予約が取れていれば、そこでもう元が取れますね。


(本多様)

そう。最初からかなりの売り上げがあがります。

最初って、「あの先生はこういうところがいい。」って。おとなしい先生であれば「口数は少ないけど、本当に優しい先生。」などの話をします。だから、いい噂ができて、それで始められます。普通に開業すると、忙しい時に来てちょっと怒らせちゃったとか、そういう悪い噂は広まるのが早いです。それなら、いい噂をいっぱい作っておいたほうがいいじゃないですか。いい人とか、優しいとか、この人の特徴は何だろうってみんなで考えてブランディングしていきます。


(安岡)

それは素晴らしいですね。先生方も、自分のことは自分では分からないですからね。考えたこともないでしょうし。それを皆さんで一生懸命考えていただけるなんて、とてもいいですよね。


(本多様)

また、予約率の目標があるから必死ですよ。


(安岡)

そうなんですね。会社内でも情報を共有していますか。


(本多様)

社内で、どうやったら予約率が上がるのか、どうやったら人が来るのかを真剣に考えてみんなで議論して、チラシの渡し方から配置の仕方まで、どうやれば一番人が来るかを吟味しています。


(安岡)

そこまでしっかり考えられているのであれば、ただメーカーさんが手伝った内覧会とは全然違いますよね。


(本多様)

全然違いますよ(笑)


(安岡)

内覧会のお手伝いレベルでは、当然目的の共有や目標も無いですし、お手伝いだから。

それなら、お金をしっかり払ってやってもらって、患者さんに理解してもらって、自分のセルフプランニングもしてもらった方が絶対にいいですよね。


(本多様)

絶対に、プロの行う内覧会はおススメです!絶対にやった方が良いと思います(笑)


(安岡)

本当に!さて、話題は変わりますが、いただいた資料の一番初めに書いてあった、健康経営優良法人のお話をうかがいたいのですが、どういった経緯で取られたのでしょうか。





(本多様)

あれは、JALがこの上の認定を取っていたんです。私は盛和塾という会で一昨年代表世話人をやっていたのですが、そこで、JALの方から話を聞いて「本多さんも取れば?やることをやれば取れるよ。」と言われました。うちの社員もそういったことが好きなので、コラムを書いたり、運動会をやったり、いろいろとやる必要があるのですが、みんなでやりました。


(安岡)

健康経営優良法人というのは、身体の健康のことですか?


(本多様)

そうです。経済産業省が出しています。例えば社員全員が健康診断を受けるとか、そういった項目がたくさんあって、全部クリアしたらもらえます。

1年目は審査がすごく厳しくて大変でしたけれど、1回通ると2回目、3回目は通っていきました。


(安岡)

こういったことも、社内のスタッフについて思うことにつながるイメージがありますね。

あと、ここまで外向きのお話ばかりでしたが、会社の中の運営はいかがですか。


(本多様)

うちはばりばり盛和塾のやり方で、従業員のために会社はあると言っています。朝礼でもフィロソフィー手帳を読んで、考え方とかを語ってもらって終わるということを毎日やっていますよ。うちを辞めた子はみんな、うちの会社っていい会社だよね、というのが辞めてから分かったと言いますね。


(安岡)

出戻りとかもありますか。


(本多様)

出戻りは、みんなアルバイトで戻ってきています。

例えば、うちの部長でずっとやってきたけど、夜10時ぐらいまでずっと働くのは「自分が将来やりたいことと違う。」と大学に入り直して、アルバイトで働いている人もいますよ。アルバイトといっても、うちのことを一番真剣に考えている。ただ、肩書と責任は無いから気楽だね、みたいな。


(安岡)

そういう働き方もありますからね。


(本多様)

そういう人が5、6人はいます。


(安岡)

イベントをやっていることで、そういった戻り方というか働き方ができている部分もありますよね。


(本多様)

そうですね。やることも分かっているわけですし。

他にも、内覧会が好きだけど、真面目で全然人を呼ばない元検査技師の社員がいて「どうするの?下の子がどんどん抜いていくよ。」って言ったら「私も向いていないと思うんですけど、この会社が好きなので。」って。「じゃあ違う会社に行って、アルバイトにおいで。」と伝えたら、「そうします。」今は違う会社で働いて、うちにはアルバイトで来ています。「ここはみんなとしゃべれるから楽しい。」って言っていますよ。


(安岡)

働き方もすごく柔軟でいいですね。


(本多様)

お給料も2ヶ所分もらえますからね(笑)


(安岡)

それでは、会社として今後目指していきたいことは何かありますか。


(本多様)

うちは、先生からお金をいただいて仕事をしていますが、やっていることは社会活動に近いと考えています。

スタッフには、最初に入社するときに、世のため人のためになることをする会社だから、人のために役立つことをするという気持ちが無いとすぐに辞めてしまうよ、という話をします。そこでスクリーニングして、それが出来る人しか今残っていません。人の役に立つことをするとうれしいっていう人の集まりなので。

数をこなせば売り上げはある程度までいきます。2019年は360件の医科歯科の内覧会を実施して、その他に不動産の内覧会のお手伝いもしたので、売り上げは上がっています。でもやっぱりみんな不動産の内覧会は「何か違う。」と言います。「そうだね。これはみんなのお給料のためにここに入れているんだよ。だけど、本当にやりたいことは世のため人のためだよね。」って言っています。だから、医科・歯科の分野に特化していきたいと考えています。

会社をどんどん大きくするというよりも、医院の中に入ってもっと活動したり、コンサルタントのような感じで先生のお困りごとを助けたり、そういう部門を作っていきたいなと思っていて、今、そちらでも動いています。

例えば、先生が対スタッフさんで孤立していることも多いと考えていますのでそのアプローチも行っています。


(安岡)

孤立している先生、結構多いでしょうね。


(本多様)

特に男性の先生だと、女性の集団に負けてしまうことも多いですね。

1人心根の悪いスタッフが入ることで、ぐちゃぐちゃになることもよくあります。私の知り合いの先生が「本多さん、1人ブラックな考え方の子がいたら、どれぐらい駄目になると思う?・・・・30人はつられる。だから1つの医院がつぶれるなんて、あっという間だよ。」と言っていましたね。だから、そういう人だけが原因ではないですが、声が大きくて、医院の理念やコンセプトに歯向かうような考えをもっているスタッフがいると医院が回らなくなります。歯科だけではなく医科も同じだと思います。


(安岡)

一般企業も同じかもしれませんね。


(本多様)

一緒ですよ。だから、私は心のきれいな人しか採用しません。優秀だけれども、という人はいなくなりますね。そういう人ほど、自分の事だけになる。怒ったりする人は、人より自分が大事。そういう人はどうしても「優秀だけど、もったいないね。」と言われながら去っていきますね。


(安岡)

内覧会で人を呼ぶということだけではなく、先生方への気持ちのサポートなども含めて、全体的に何らかの輪として考えて作っていきたいということですね。


(本多様)

そっちですね。内覧会して終わりではなく、もっとできることがあると思っています。院内のミーティングを助けてあげるとか、スタッフさんとの橋渡し役になってあげるとか、そういったことも大事なんじゃないかと思いますね。


(安岡)

とても大事だとおもいます。本多社長のお考えが良くわかりました。ありがとうございました。


(本多様)

ありがとうございました。



医院と患者さんをつなぐ仕事をされている本多社長。こちらには掲載できなかったが、多角的に次のステップに進もうとしており、志の高さは本当に刺激をうけた。今後も本多社長から目が離せない。



 

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