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〈社長対談④〉プライアルメディカルシステム株式会社 代表取締役 亀澤 真人様

(安岡)

本日はプライアルメディカルシステム株式会社、代表取締役の亀澤様にお話を伺います。よろしくお願いします。



(亀澤様)

よろしくお願いします。


(安岡)

まずはご経歴について伺いたいと思います。


(亀澤様)

私は工業大学を卒業していて、医療に関わるようになったのは大手医療機器メーカーに新入社員として就職してからですね。ただ、医療を志したのはもっと前です。小学生、中学生、高校生と色々な病気をする中で医療に助けられて、その恩返しをしなければと医療業界に進みました。

大手医療機器メーカーでは医療機器の販売部門と技術部門にて7年ほど在籍しました。その後、医療機器だけではなくシステムやネットワークに対する深い理解が求められる時代になりましたので、PACSやRISといった放射線部門の画像システムの開発・販売を行う会社に再就職しました。そのときには既に独立への思いがあり、2007年5月に現在のプライアルメディカルシステム株式会社を立ち上げました。



(安岡)

ありがとうございます。独立をするきっかけについて教えて頂けますか?


(亀澤様)

まず、2007年当時、まだ電子カルテや付随する部門システムネットワークの導入経験がある病院の職員さんは非常に少なく、メーカーさんに任せれば何とかなるという意識が強くありました。

しかし、実際には、現場からの要望は山のようにあって、それを実現したいと思ってもシステム上できないことが多々ありました。その狭間で、メーカーのSEさん達は非常に悩んで、苦労されていました。

その後、システムのパッケージ化の流れで、「うちのシステムはこの形だからお客さんが合わせて使ってください。」という形が主流になりましたが、やはり、どうしても現場に合わない部分が出てくる事が問題になっていました。


(安岡)

パッケージ化によって現場とのミスマッチが起きたということですね。


(亀澤様)

はい。現場からは不満が出る、メーカーさんとしてはパッケージ化を進めたい。現場からの過度な要望もあるでしょうが、導入前に「この病院ではどんな仕組みが必要でどう実現してどう使っていくのか」という事を、きちんと検討できていなかった事が問題だったと思います。

最初の導入のタイミングでは、医療機関側では自分達に必要な機能が分かっていません。システムを使っていく上で、要望が出てきますが、6~7年に1度のリプレースのタイミングですと、前回の担当職員が残っていないこともあります。

その為、病院側が初期の導入の段階で、地域性や求められている役割も含めて、どんなシステムが必要か精査しないと、全くトンチンカンなものになってしまったり、不要なものがたくさん入っていたり、期待していたことができなかったりということが起きる事があるのです。

では、それを誰が中心となってやるのか。私は院内SEがやるべきだと思っています。院内で日々運用管理をしている院内SEが、病院のことを一番知っているからこそ、使うべきシステムを評価する必要がります。ただ、場所によっては院内SE自体がいなかったり、医事課が兼務だったり、病院側でできない環境があります。

そこで、その部分をやりましょう。というのがわれわれの立ち位置となっています。



(安岡)

とてもよく分かります。私どもも求人や病院のホームページを作っていますが、求人をする、ウェブサイトを作る際に誰が取りまとめるのか、情報を得て誰が配信するのか。事務方や、医事課の方が兼任したり、院内SEさんだったりするのですが、目的と担当者が本当にマッチしているのかどうか、というのは本当におっしゃるとおりだと思います。


(亀澤様)

そうですね。われわれの会社の社員はほとんどSEで構成されていますが、SEといっても一般的なSEではなく、医療情報に特化したSEとして日々教育した人材を現場に提供しています。医療機関で雇えなければアウトソーシングすることも当然の流れだと思いますので、そこへ、きちんと教育を受けて、病院の中のシステムとは何かということを理解している人材を提供していかないといけないと考えています。

さらにもっと先の話をすると、院内SEという人材に対する医療の現場のイメージを変えたいと考えています。

システムは6~7年に1回、何億、何十億というコストがかかります。そこの費用対効果をきちんと出さなければいけません。その費用対効果とは、まず現場の効率化は当然で、プラスアルファとして、蓄積されたデータをきちんと二次活用していけるかどうか、分析するというところが院内SEとして求められると思っています。ですので、単純にパソコンが壊れました、プリンター、サーバー障害への対応だけであれば、院内SEの価値はあまり出てきません。プラスアルファで分析をして、きちんと経営情報として経営陣にデータを渡す、例えば電子カルテ内の治験データを先生方に渡す、こういったことも含めた活用がこれから求められると思っています。それができるSEを育てて医療機関へ提供しているのがプライアルメディカルシステム株式会社です。


(安岡)

ありがとうございます。導入時の構造的な問題もありますね。導入だけ進んで、運用も活用も分からないまま高額なものが入って来る。どう使うかは後からついてくる形になる。購入したベンダーもバラバラだったりすると、取りまとめだけで大変、サーバーと連携するだけで大変みたいな話に終止してしまいますしね。


(亀澤様)

そうですね。われわれは電子カルテを利用する約7年間を一つのライフサイクルとして見ています。まずは、どういったシステムを購入するべきかという戦略をきちんと立てられるかどうか。戦略を立てたあと、どう実現していくのか。そこから導入の期間が始まって、運用の期間が始まる。このライフサイクルで回していく事を客観的に見ることが必要と考えています。


(安岡)

この矢印の部分ですね。



(亀澤様)

これですね。

戦略を立てて、そこでどういうシステムを入れていくかという企画をして、そこから導入して運用していく。この入口からきちんと検討する組織、検討できるだけの体制がないと、やはり後々コストにあった稼働ができないといった問題が出てくるのかなと思います。


(安岡)

なるほど。院内のIT化を進めましょうと言っていますが、ただ進めましょうというだけで、実際に誰が現場で動かすのかという話が抜けていますよね。



(亀澤様)

そうなんです。ただ、すごく難しくなってきているのは、例えば10年前の病院の中のシステム構築と今とでは全く求められているレベルが違っています。

昔は、自分の施設内での電子カルテ化やシステム化をどうしようという世界でした。今では地域連携、情報を外に出す、外からも入れる。自院の中だけの話ではなくなっています。じゃあそこも含めて、誰がどの様に絵を描くのかといった部分が、院内の方々で対応しようとしても、そもそもの経験がない為、できない状態になっているという事です。


(安岡)

難しいですね。

それこそ本当に医療のことを知っていて、プラスその病院さんの個別性に応じて全てに対応して、さらに院外のネットワークをつなげる仕組みを考えるとなると相当な労力と知識と時間、お金もかかってきますね。


(亀澤様)

例えば、院内のシステム化ができるだけの知識と経験量は当然しかるべきですが、プラス、今の医療法令やガイドラインなどもきちんと理解していないといけません。

うちの会社は今、28名の社員がいますが、全員病院の中のヘルプデスク(院内SE)からスタートして、そこからコンサルタントになっていく形を取っています。

医師も看護師も他の方々も国家資格を持って働くスペシャリストですよね。そういった方々の日々の仕事を知ることも当然必要ですし、そこでどんなシステムがどのように使われているのかを理解してもらっています。そこにプラスして法令ガイドラインや、コミュニケーション能力、電子カルテ一つにしても色々なメーカーがあって、メーカーごとの善し悪しや特長も理解しなければいけない。そこまで含めてできる社員が初めてコンサルタントになるという形でやっています。


(安岡)

システム導入には、現場の要望に加えて、法令やメーカーの特徴など、さまざまな知識と経験が必要になってきますが、聞けば聞くほど、病院内だけで対応するのは厳しいと感じますね。

そういった意味で、プライアルメディカル株式会社様は病院さんにとっても外注するメリットが大きい気がしますね。全体的なコストダウンしつつも最適化されたものが手に入るイメージです。


(亀澤様)

そうですね。様々な医療機関のシステム導入コンサルタントもやらせていただいていますが、システムの最適化だけではなく、当然コストメリットもきちんと出すことを求められます。最低限自分達のいただくお金ぐらいはきちんと削らないと、仕事の価値をお客さんに理解してもらいづらいのかなと思います。



(安岡)

ありがとうございました。次に、御社のプライムマナティという商品について、開発の経緯などをお聞かせいただけますでしょうか。


(亀澤様)

プライムマナティに関しては、看護部の業務支援システムとして販売をしています。

開発のきっかけは、ある医療機関の看護師さんがとにかく忙しいと聞いていたので、現場のお話を聞いてみたところ、

1)紙で集まってきたインシデントレポートの処理

2)看護職員の入退職・産休の人事データ管理

3)教育や目標管理

などの事務作業が負担になっているとの事でした。

人事、インシデント、医療安全、教育で担当が別のことが多いのですが、各々がエクセルでやっていました。エクセルでやるリスクや、それぞれのデータをクロスして何かに役立てるデータとして使うことも難しい状態でした。

皆さん、予算がなくて、一生懸命エクセルベースでやっている業務自体を何とか楽にできないか。それから、せっかく業務システムとして作るなら一ヶ所に集まったデータを次に役立てたい、そんな思いから現場の方と一緒に作ったのがプライムマナティです。

幹部が人事管理、教育、医療安全で分かれているところが多いので、それに合わせて人事管理、教育・目標管理、インシデントレポートといった機能を一つのシステムにパッケージ化して安価に提供できないかということで作りました。そのあとで、そこに看護勤務割や看護必要度を入れたり、あとは日本看護協会のDiNQLというデータベース事業があるので、そこに効率的に登録できる仕組みを入れたりということをやっています。



(安岡)

評判はいかがですか。


(亀澤様)

今、全国で南が熊本から北は山形まで、30施設ぐらい導入していただいています。


(安岡)

導入されてきていますね。


(亀澤様)

そうですね。ただ、全ての機能を一括で導入しているお客さんはいません。バラ売りで、後から追加できますので、まずインシデントレポートから入れておいて、徐々に人事キャリア、教育、などを入れていく場合が多いですね。看護勤務割については200床以下が主体となるような仕組みですし、教育目標管理が欲しいのは300床ぐらいなので、全部が現場の状態に合うわけではありません。ですので、そのお客さんに合わせた機能をピックアップして提供しています。


(安岡)

なるほど。現在、コロナ下で看護師さんの業務が増えてきています。ですので、できる限り効率化できるものは効率化して、経営に直結するような対応をする必要があると思っています。現場から経営へ、プライムマナティも、現場の声があって開発されている為、現場主体のシステムになっている印象がありますね。


(亀澤様)

そうですね。われわれはもの作りができますが、具体的にどんなものが喜ばれるかというのは、会議室内ですと空想の域を出ません。現場の方々は日々困っているけれど、システムは作れない。じゃあ一緒にやったらいいのではないかと。それで喜んでいただけて、それが他の病院でも需要があるなら作った価値はあると思います。


(安岡)

ありがとうございました。最後に全体的な今後の展開などを教えて頂けますか?


(亀澤様)

はい。これから力を入れていくのはやはり人材、SEのレベルアップです。

現状、アウトソーシングで院内SEの提供を行う企業も増えてきましたが、キツイ言い方になりますが、質が悪くなってきています。委託で院内SEを入れているお客さんが増えていますが、SEが教育も受けず、医療現場も知らない人材を入れて「あとは現場で教えてください」といったケースが非常に多く見受けられます。大手になればなるほど、人材育成が追い着いていないのかなと感じます。医療機関側もSEの評価経験が無いため、看板が大きいから安心するのかと思いますが。難しいですね。


(安岡)

とてもよく分かります。ウェブサイトの制作会社も、今は星の数ほどあり、医療をやっていますという会社も多いです。しかし、現場を全然知らなかったり、どこかで見たようなものを作ってきたりといったところばかりです。

そこの医療機関にマッチした、オリジナリティがあるものを作るためには、医療の状況をディレクターや制作者が知らないと話が全く進みません。

医療機関をやったことがあるというだけで、その医療機関に最適なものが提案できるかは不明ですね。一朝一夕ではできない事かなと思います。実際、医師と対等に話さなくてはなりませんし。


(亀澤様)

そうですね。システムメーカーの良し悪しも導入目的に対して様々な角度から見ていかないと、より適したものが得られないと思います。


(安岡)

そうですね。また、医療機関側も、金額だけで会社を変えてしまうこともありますが、あまりいいことではないかなと思います。0-100では無くて何が最も重要で、効率的な事は何かという、バランスを考えていく必要があるかなと感じています。


(亀澤様)

そうですね。費用の面ももちろん重要ですが、業務に対しての求める効果が何か、契約書や仕様書にしっかり書くことも大切です。会社を変える時には契約書や仕様書で何が提供されて何が提供されないのかをしっかり医療機関側が把握することが重要かと思います。また、自治体ですと必ず入札がありますが、民間はあまりやりません。私は民間の医療機関も、どんなものを購入するのかきちんと仕様書に残して入札を行うべきだと考えています。

現在、委託業務やシステムを使う側が何一つ法的に守られていない、PL法も関係ない、クーリングオフもないといったような現状で、仕様書をきちんと残さないと病院側も守れない。それで泣き寝入りした病院も多いのではないかと思います。


(安岡)

現場の声をしっかり聞きつつ、全体を俯瞰で見てお仕事されていることが伝わってくるお話でした。ありがとうございました。

亀澤社長からは、医療機関のシステムの構築や独自のシステム開発、医療のSEについて、お話をお聞きいたしました。今後、医療もDXやIT化がどんどん進む中で、現場の要望や経営の要望をバランス良く考えられる会社として、非常に活躍される事と思います。

今後も亀澤社長に注目していきたいと思います。


 


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